作者:陰狼さん

武神伝 第1章〜不動明王・降臨〜


2150年、世界は平和であった。
 国連は拡大し、地球連邦と言う組織になり、地球は安定していた。
                      ―――しかし、忘れてはならない
                                  どんなに平和でも
                                      どんなに世界が黙していても
                      そこには“負”があると言うことを……。

高層建築の建物が並ぶ日本。
そこにあるアンバランスな木造建築の建物がある町。
京都の一角、そこにあるとある寺。
最近では寺に参拝してくる人も減り、大昔からある寺も老朽化して取り壊される物も多い。
そんな寺の減った日本での、寺、ここの住職は石頭で、いくら取り壊そうとしてもすぐに追い返されると言う。
しかしこの寺には歴史らしい歴史も聞かない、ただそこにあるだけなのでは?誰もが首を捻った。
その謎を知っているのは住職の新繕だけ、しかしもちろん彼は教えようともしない。
そんな彼にはたった一人の身内がいる、それは同じくこの寺で修行をしている凰繕(おうぜん)である。
凰繕は、新繕の実の孫だと言う。
しかしこの凰繕は、物欲に乏しく、様式美が無く、要するにこの寺を守る気が全く無かった。
本人曰く。
「普通に生活できたらそれでいいや。」
との事。
しかし、そんな彼の生活を一変させるある事件が起こる……。
今回はそこから始まる。

木造建築のずいぶん古くなっている寺、そこにいる、頭の禿げ上がった老人が、自分の孫の名を呼んでいた。
「凰繕!凰繕!全く、どこに言ったんだあの馬鹿孫は、戻ってきたら反省室行きだな。」
この老人こそが、寺の住職、新繕である。
彼は寺を守る気が無ければ、修行をする気も無いという、全くやる気が無い男だった。
彼は5歳のときに両親が死にこの寺に引き取られた、そのときに、凰繕と言う名を名乗らされた。
しかし、12年もすんでいればこの寺にも愛着が湧くだろう、とも考えられるのだが彼の場合はそう言うものが全く無い。
使えなくなったものはすぐに捨てる子供であったし、現在も使えなくなったものはすぐに捨てる高校生である。
しかし寺で修行をしながらも、高校にはちゃんと行っている、もっとも、この寺は町外れの山の中にあると言うのに。
 新繕は頭を悩ませまくっていた。
 最近、血尿が出るようにもなったと言う、その内過労で倒れるのではないだろうか。
さて、その凰繕はどこにいるのかと言うと……。
少し山を登る、そこには都合よく隠れるのに最適な洞穴がある、そして、そこに散らかされた吸殻、そのタバコの持ち主の長い茶髪で、長身の男、彼が凰繕である。
「まったく、あのじじいもしつこいよな、どうせあんな寺は潰れちまうんだし、さっさと老人ホームにでもはいって老い先短い人生に幕を閉じればいいのによぉ、全く。」
 彼は再びタバコに火をつけた、そして、ふと後ろを向いてみると、そこには12年間共に過ごしてきた祖父の顔が、鬼のような形相で睨んでいた。
「や、やぁおじい様、今日も元気ですね……、おっとこんなところで怠けて…じゃなくて、こんなところで休憩してる場合じゃなかった、早く帰って修行しないとなぁ〜。」
 凰繕は逃げようとするが、服をつかむ、新繕の手がそれを許さんと言わんばかりに握っている。
「さ、今日も反省室行きだぞ……、少しは頭を冷やせ!この馬鹿孫!」 「そんな〜……。」
 がっくしとうなだれる凰繕を尻目に、新繕は寺へと帰っていく。

 寺に帰ると、凰繕は、薄暗い部屋に押し込められた。
「少しはそこで頭でも冷やしていろ!」
 反省室のドアは強く閉められ、そして、鍵がかかった。
 凰繕はしばらく座ったままだったが、5分もすると。
「全くあのじじいも馬鹿だよな〜ほんと。」
 凰繕が、奥の壁の突起をつかみ、引っ張った。
 すると、壁が開いた、そこには道が続いている。
「10年かけて作った抜け道にも気付かないとは、われながらなかなか良いできだな。」
 凰繕は、部屋に自分を模して作った人形をおき、部屋から出て行った。
 
しかし、数10分後。
「え〜と、こんなにながかったっけな?確かこっちを右だよなぁ。」
 薄暗い道が続くごとに、だんだんと不安になっていった、心なしか、通路もだんだん広くなっていっている気がする。
 更に数10分後。
 絵があった。
 全身が火に包まれているような剣を持った仏がそこにあった。
「おお!明らかにでれそうだ!しかし、こんな絵書いたっけな?」
 凰繕は絵に手を触れてみると、いきなり、絵の眼の部分が光り、扉が開いた。
「おお、こんな高性能な扉だったか?」
 しかし入らぬことにはわからない、とりあえず、中に入ってみた。
 また闇、圧倒的な闇がそこにあった。
 姿こそは闇によって見えないが、圧倒的な存在感を感じさせる物がそこにある。
 しかし、凰繕は全くそのことを気にせず、がっくりとうなだれ。
「何だよ〜、外じゃねぇのか……まぁ、あのじじいは馬鹿だからあんなか覗こうなんて馬鹿な真似はしねぇと思うけど……ん?」
 ふと見ると、天井の所々に蛍光灯らしき物や、電球らしき物が点在していた。
 火の無いところに煙は立たない、もとい、電気の無いところに、電球はつけない。
 要するに、どこかに電源があると言うのだ。
 10分後。
「どこを探し回ってたんだ俺は……。」
 凰繕は、荒い息で、目の前の電源を見ていた、ちなみに入ってきた扉の隣にあったという。
「全く、手間取らせてくれるぜ。」
 凰繕は何故か鼻歌を歌いながら、電気のスイッチをONにした。
 すると、しばらく使ってなかったためなのか、淡い光が出た。
 しかし、部屋の内装はわかる、壁はこの近未来には珍しく全部土だし、それによく見ると、ところどころにろうそくがある。
 そして、圧倒的な威圧感の正体は、巨大な仏像(?)であった。
 顔やら細かいところは違う物の、どうやら、先ほどの絵の、仏を模して作ったものにも見える。
 まぁ、あの薄暗い反省室よりは暗くは無いし、それに広い。
 ここをあの洞穴に続く第2の秘密基地にでもしてやろうとも考えれる。
 何より理にかなっているし、サボってもここに逃げ込める。
 そして、あの馬鹿なじじいには到底発見できまい、凰繕はかなりたかをくくっていた。

一方彼の祖父はと言うと。
「ふむ、凰繕は反省しておるようじゃな、あいつもずいぶんと大人になった、昔だったらわめき散らしてでも外に出ようとしていたからな。」
 新繕は、穏やかな顔で、反省室にいるだろう凰繕を思い浮かべていた。
 しかし、実際にいるのは人形だと言うことは全く気付くことはなかった。
「まぁ、あいつを部屋から出したらあいつの好きな物でも食べさせてやるか。」
 彼が、馬鹿なじじいと言うのも納得がいく、そう思った読者も少なくはないはず。
「む?」
 突然、新繕の顔が険しくなった。
「……、この感じは以前にも……まさか……いや、気のせいだと思いたい……、今日は疲れてるのかもしれないな……。」
 しかし、無常にも彼の不安は的中することになる。

 人工島と呼ばれる島。

 世界初の人間が作った大陸、そこはちょうど地球の中心に位置し、そして、人々の技術の進歩を示すような物であった。
 大陸と言っても、大きさは島くらいしかなく、そして、植物がいない不毛の大地。
 ここにあるのは、連邦の本部。
 ここから、さまざまな大規模な事件や事故に対応すると言ったところ。
「何?日本の京都で巨大な人型起動兵器が出現した?」
「ええ、我々はあれをそう呼ぶしかありません……、何より、京都の電気系統があれによってすべてダウンしていますから。」
 報告した男の上司らしき男は少し唸り。
「支部の兵器で対応できないようなら、こちらから“あれ”を出すぞ。」
 すると、報告をした男はギョッとし。
「ええ!?あなたの権限でそれを出してもいいのですか!?」
「ええい!このままだと日本が危ないだろうが!……それに、まだ出すとは決めてないしな……。」
 しかし、出さないとも決まってもいない、この人は、頭に血が上りやすいから危ないとわかったら勝手に出動させそうだなぁ……、と、報告をした男はそう思った。

 ―――日本・京都

「オオオオオオ!!!!!」
 巨大なロボットであった。
 所々にコードをぶら下げているが、移動には支障をきたしてはいないようだ。
 あれは付近の町を破壊しながら進んでいる。
 戦闘機が攻撃を仕掛けるが、何かではじかれ全く届いていない。
 そして、また1機打ち落とされた。
「オオオオオオ!!!!!!」
 しかし、最も異様ともいえたのが、所々に貼り付けてある札。
 そして、ロボットはどんどん街を進んでいく、一体どこに向かっているのか?

 ―――凰繕が住んでいる寺。

「ああ……恐れていたことが事実となってしまった……、奴らめ……この12年間、全く姿を見せておらんと思ったら……、しかし、いまや護法機を動かせる力を持った人間は……。」
 いや、あいつの息子だったらあるいは……、いやろくに修行もしていないあいつが動かせるものか……。
「悲しいことだ……、長期にわたって住んでいた町を破壊される様を……指をくわえてみているしかないとは……。」
 新繕は、涙を流しながらその様を見ているしかなかった。

 ―――地下

「ん?偉く地響きがするな。」
 凰繕は、今4本目のタバコに火つけ用としたとたんに、その異変に気付いた。
「怪獣でも出てきたのか?……でもなぁ。」
 ヴオン……。
 そう言う音がした。
p  明らかに、あの仏像からしたと思い、仏像を見てみると……目が光っていた。
「うお!?何だ一体!?」
 すると、今度は胸が開いた。
「こいつ……軍にある起動兵器よりは大きいけど……、ロボットなのか?」
 これに乗るといやな予感がする……、しかし、上の異変も気になる……。
 命を取るか、好奇心をとるか……。
「ええい!ままよ!」
 凰繕はその仏像に乗り込んだ。
 すると、案の定、胸は閉じた……が。
「あれ?こいつどうやって動くんだ?明らかに空洞じゃねぇか?」
 やはり気のせいだったか……、そう思い下りようとするが、なぜか開かない。
「あれ?でれねぇ!?畜生!!!」
 凰繕は悔しさのあまり、横の壁を叩いた、すると、いきなり、中が明るくなった。
「おお?」
 視界に移ったのは、先ほどの薄暗い自分の秘密基地(決定済み)だ。 「おお、こいつはまさか……。」
 ふと、足を一歩前にやる、すると、仏像も合わせて足を一歩前にやった。
「ロボットアニメでよく聞く、操縦者の動きに合わせて動くってロボットじゃねぇか!けど……。」
 扉の大きさ的には確かに、この仏像と同じだが……。
「む〜……。」
 先ほど歩いた通路と考えてみると、明らかにこの仏像がとおれる大きさではない。
「どうすりゃいいんだ?」
 ふと上を見てみると、何か扉のような物がある。
「おお、こいつはまさか……。」
 それを少し小突いてみると、案の定、扉が開き、光が差し込んできた。
「おお!こいつはいける!よっしゃぁ!行くぞ!」
 しかし、どう出ればいいのかわからなかったので、とりあえず、よじ登った。

「ん?おお、ちょうど俺の住んでる山の頂上じゃねぇか。」
 凰繕は、これ幸いと、町のほうに向かっていった。
 それを見ていた老人1人。
「な……何故あれが動いておるのじゃ!?」
 自分の記憶では、あれはすでに動かせる者が存在しない……、いや、まさかとは思うが……。
「凰繕……なのか?」
 京都の町へと向かっていったそれを見て、新繕はそう呟いた。

「ぬお!コードの化け物!?」
 それを見て思わずそう言った、しかし、対象の化け物は気にした様子もなく、目的地のどこかに向かおうとしていた。
「あくまでシカトか……ならば!」
 おもむろに、凰繕は高く飛び上がった。
「ラ○ダー……キーック!」
 ロボットの背中に、凰繕の乗っている仏像の足がめり込んだが、バリアによって弾かれた。
「ぬを!」
 凰繕は激しく転んだ。
「オオオ……。」
 自分を邪魔する物の存在に、腹を立てたのか、謎のロボットは、身体に生えているコードを凰繕に巻きつけた。
「ぬおおお!なんじゃこりゃぁ!?きもちわりぃ……」
 引きちぎろうと抵抗して見せるが、思ったより堅い。
 そうする間にコードはどんどんしまっていく。
「グアアアア……何で痛いの?」
 何故か、仏像の受けているダメージが自分にやってきている感じがする。
 受けているのは仏像であって、決して自分ではないはずなのに。
「くそぉ、どうすりゃいいんだ?」
 万事休す……そう思った矢先声が聞こえる。
『未熟だな貴様は……。』
 低く、頭に響く声だ。
「誰だあんた?」
『だが、素質はある。』
 どうやら、一方的に頭に入ってきているようにも感じられる。
『私の言うことに続け……無双法身(むそうほつしん)……。』
「無双法身……。」
『虚空同体(こくうどうたい)……。』
「虚空同体……。」
『そう我が名は……。』
「不動明王……!」
『よくぞ我が名を呼んだ……汝の願い……聞き入れたぞ。』
 カッ!
 仏像が激しく光る、すると、仏像を締め付けていたコードは燃え尽き、そして、仏像の体は、火焔に包まれていた。
「ぬわ!何じゃこりゃ!?」
 先程までただの動く仏像だったのがいきなり炎に包まれたのだから、それは驚くことだろう。
「まあいいや、何気に戦力アップって感じだし。」
『そいつには生半可な攻撃は聞かぬぞ。』
「まだいたの?」
『良いから聞け……、その剣を持つのだ。』
 剣と言うのだから、腰にあるのだろうと、凰繕は腰に手をやった。 やはり、そこには剣があった。
『その火龍封神剣(かりゅうほうしんけん)は、使い手の技量で威力が変わる……貴様の技量ならば、その様な怨霊機、すぐに倒せるであろう。』
「おお、なかなかいかしてるじゃん、こういう中華剣風なの、俺すきよ。」
 そして、声は反応しなくなった。
「むむぅ、なかなか無責任な奴だな。」
 ふと、先ほど自分と戦っていたロボットは、すでにコードを再生させていた。
「オオオオオ!!!!!!」
 そして、即座に、ロボットは再びコードを、不動明王の方に伸ばしてきた。
「無駄だっつーの!」
 凰繕は、襲い掛かるコートを切り落とした。
 そして、すぐにロボットのほうに飛びかかる。
「うおおおお!!!!火龍封神剣!火生三昧!」
 すると、火龍封神剣の刀身は、炎に包まれ、100メートルほどの長さになった。
「オオオオオオオオオ!!!!!!!!」
 謎のロボットは、火龍封神剣の刃に包まれ、身体が燃え尽きた。
「むぅ、我ながらなかなかいいネーミングセンスだ、決め台詞も考えておかないとな。」
 すると、不動明王の背中の炎は、消えてしまった。
「なにぃ!?やっぱりずっとあの状態じゃねぇのか!?……まあいいや、セリフは頭に入ってるし……ん?」
 先ほどのロボットがいたところには、何故か手のひら大の札が残っていた。
「ん〜?怪しいな……破り捨てようかな?」
「待たぬかたわけが!」
 不動明王の足元を見てみると、そこには自分の祖父が、息を切らせながら走ってきているではないか。
「おお、じじい、生きてたか。」
「はぁ……はァ……いいか……よく聞け……その札はな……媒体にされた人間の……魂魄が……入っておる……。」
「ふむふむ。」
 新繕は深呼吸をし。
「まぁ……詳しいことは……あとだ……とりあえず……まずは……その護法機を……元の場所に……、戻しておけ……いいな……?」
 凰繕は考えてみた、確かにここで戻さないと、町は騒ぎになって帰るどころではなくなる。
 しかし、帰ると、あのじじいの、怒りの鉄拳が飛んでくるだろう……。
 ……目立ってしまうのは致し方ないか、じじいの怒りの鉄拳何ざ別に痛くも無いし……。
 凰繕は、とりあえず、帰ることを選択した。

 人工島

「なにぃ!?突如現れた謎のロボットによって、京都に現れた謎のロボットは倒されただとぉ!?」
「ええ、我が軍が所有している、人型起動兵器の10倍以上の大きさで、体操選手並みのアクションをして、突如身体が燃え上がったかと思うと、その謎のロボットを、炎の剣で真っ二つにしてしまいましたし。」
 少佐は考えていた……、我々は日本の防衛を任されているからして、このトップシークレット者の事実を、上層部に伝えるべきか。
 それとも、自分達でこの問題を解決すべきか。
「少佐?」
「あ〜、ご苦労だった、なお、この問題は我々の方で解決しておく。」
「上層部に報告しなくていいんですか?」
「日本の問題だ、我々で解決する。」
「了解。」
 報告をした兵士は、敬礼をして、部屋から出て行った。
「……はぁ!勢いでまた言ってしまった!」
 いつもこういうミスばかりをする、しかし、こういうことで、少佐まで上り詰められたのもまたすごいともいえる。

???

「何?怨霊機がやられた?」
 薄暗い建物の内部、どこかはよくわからないが、建物が日本風なところからして、恐らくは日本のどこかであろう。
「ええ、何故か、どこかに消えていた護法機が出てきてしまいまして……、参りましたなぁもぉ……。」
 陰陽師の着ているような感じの青い服をした男は、かんらかんらと笑ってみせる。
「おい、真月、そんな余裕で良いのか?この調子では、また怨霊機をけしかけてもやられるだけじゃないのか?」
「ああ、よりにもよってあの不動明王が相手となるとな……。」
 同じく陰陽師のような格好をした男が現れた、先ほどの男とは違い、この男は赤色だ。
「なぁに、不動明王も、操者が未熟となれば……心配することはなりませんよ我が主よ、この真月が、あなたの怒りを静めて見せましょう。」
 真月と言う男は、大げさにお辞儀をすると、その場から消えた。

 こうして、サイは投げられた。
 ここから様々な戦いが彼の目の前で起こるだろう、そして、戦いを通し、凰繕はどのような成長を見せていくのか?凰繕は何を知ることとなるのか?
 それは、この戦いが終わったとき、明らかになる……。

第1章あとがき

 どうも陰狼です、いかがだったでしょうか?武神伝第1章〜不動明王・降臨〜は?
 まぁ、自分はこういう作品は初めてでして、今一、物足りない感があるかと思いますが!
それは話を進めて克服していきますので、応援よろしくお願いしますm(__)m


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