作者:陰狼さん

武神伝 第2章 〜戦い・その意味〜


「お前は何故、不動明王もとい、護法機に乗ったのだ?」
 凰繕は少し唸った、そして、思い出したように。
「消去法だ。」
「消去法?」
 凰繕は首を縦に振る。
「そう、確かに俺はあそこで逃げることだってできたかもしれない、別に乗る必要も無かった、というか、乗れることも知らなかった。」
「ほう。」
 新繕は感心したように頷いた。
「だけどさ、ふと、声が聞こえた気がした、俺を呼ぶ声、そして、俺が好きなあの町を破壊されるのを黙ってみてるわけにも行かなかったし、なんか指加えてみてるって俺の流儀じゃないし。」
「なるほど、さすがは、凰益の息子だ、そして、わしの孫じゃ。」
「ところでさ。」
 凰繕は周りを見渡す。
「何じゃ?」
「なにさここ?」
 周りにろうそく、円形に並ぶ文字、一言で言うと、陰気臭い。

 武神伝
 第2章〜戦い・その意味〜

 中心には、ずいぶんと古ぼけた札、昨日の2時ごろ、怨霊機から発見された札であろう。
「まあ昼昨日も言ったが、この札には、怨霊気の媒体にされた人間の魂魄が入っておる、そして、この魂魄を抽出するには、1日中この陣の中心に敷いておくことだ、まあこれくらいならお前でも……。」
 新繕は、凰繕のほうを向いたが、こつぜんと消えていた。
「……、まったく、馬鹿孫が……。」
 新繕は、呆れたように呟いた。

 一方、凰繕は町に出ていた
もう、昼になっているので、町は人々でにぎわっていた。
遊びに行く者や、食事をしに行く者などいろいろな人々でごった返している。
「むむぅ、なんかいろいろと面倒なことになったな……、ここで、ロボット系のお約束行くと……、どんどん敵がでて来るんだよな確か……。」
 凰繕は腕を組んで下をうつむきながら考え込んでいた。
「あ〜、めんどくせぇな……、何で俺がやらなきゃだめなんだ?」
 凰繕はタバコを取り、それに火をつけた。
「ふぅ〜……、やっぱり落ち着くな、いらいらしたときはこいつに限るってもんだ……。」
 少し間をおき。
「これからどうしようか……正直人付き合いだってあるし、学校の事だってあるし……また消去法かな?」
 消去法というのは、このまま終わりの見えない戦いを続けて町をまもるか、それとも、その戦いを拒否し、町が破壊されていく様を指をくわえてるか。
「……、まあ、100パー%あの奇妙なロボットがでてくるとはかぎらねぇし、緊急事態に俺が戦うってことだな、それに、軍だって奴らと戦ってくれるだろうしな。」
 彼は明らかにお気楽思考であった。

 ―――???

「さーて、言っては見たものの、どんなのが良いかな?」
「おい真月、何人間どものニュースとやら何ざ見てるんだ?」
 とある場所、にある、真月の部屋。
 畳がしかれてある部屋に、たんすの上に乗っている、25インチ程度のテレビ、しかし、画質はよく、カラーである。
「ん?馬元……、君にはわからないかなぁ?やっぱり人間どもに付け入るには人間どもを知ることのほうが先だって言うだろ?」
 真月は呆れたようにため息をついた。
「……そう言うもんなのか?」
 とりあえず、馬元は、とりあえず、真月とテレビを見ることにした。

―――人工島

「とまぁ、今後、日本に現れたこの化け物の名を、魔人と称し、いご、警戒をしくという形で……。」
 いすが円形に並ぶ会議室、そこに並ぶ、強面の軍関係者。
「なるほど、しかし、軍で撃退することのできなかった相手がまた現れてしまったら?」
「しかも、敵が1対で現れるとも限りませんしなぁ。」
 会議室はどよめきだすが、先ほど説明していた男は少し落ち着かせ。
「落ち着いてください皆さん、相手は必ずしも2体3体いるとは限らないのです、もしかしたらもう出ないということもありますよ。」
 すると、今度は一気に静まり返り。
「まぁ、それも考えられることでもあるな、しかし、その魔人とやらはずいぶんと興味が湧くな、一体どこから出てきたのだ?」 「はぁ、まあ真に言いにくいのですが……、何でもあの魔人は京都の街中に突如出現したのですよ……。」  しどろもどろに答える男の様子を見て、また会議室がどよめきだす。
「何?じゃあ何か?街中にそれらしき設備があったとでも?」
「現状ではその可能性も否定できませんね……。」
「……、明日の正午、京都を調査させるぞ。」
「はっ!」

 ―――???

「ふぅ、なんか事件がありすぎだね馬元。」
 真月はテレビを消し、ため息をついた。
「いいことじゃねぇのか?それほど付け入る隙があるって事でよ。」
 すると、真月は静かに首を横に振り。
「分かってないなぁ、木を隠すなら森の中とは言うけど、そう、暗い顔の連中が増えちゃうと僕が楽しくない。」
「それはどういうことだ?」
 すると、真月は、嘲笑し。
「全然分かってないね馬元君、いいかい?僕がやりたいのは、街中で楽しそうにしている人間達を悲痛の顔にし、そして、どんどん負を広げ、それっで、徐々に楽にしていくというのがやりがいがあるってものなんだよ?」
「ほう、お前ってそう言うタイプだったのか。」
 馬元は感心したように頷いた。
「それに、僕が嫌いなのはあの護法機!タイミングずれまくってるし出現の仕方もかっこ悪い!はっきり言って、センスがまるで無い!」
   このときばかり馬元は、護法機の操者がどんな人物かが非常に気になってしょうがなかった。
「だが、こうやって躊躇してても進歩が無い、やっぱり街中にこそ負があるもんだしね、と言うわけで行ってくるよ。」
 すると、真月の身体は闇に包まれて消えた。
「……、やっぱりいまいちつかめない奴だな。」
 馬元は呆れつつも、その様子とやらを見てみることにした。

 ―――京都

「あ〜、暇だな……いい加減戻らねぇとそろそろうるせぇし、帰るか。」
 凰繕は背伸びをし、あくびをしながら寺のほうへ向かおうとすると。
 ズッゴォォォン!
「オオオオオオオオ!!!!!!!」
 ビルの中心に巨大な、所々に電化製品をくっつけている、両手は実態がつかめないような形の怨霊機が現れた。
「む……こいつはやべぇ、とっとと寺にもどらねぇと。」
 すると、凰繕がズボンのポケットに入れていた、携帯がなった。
「ん?誰だ?」
 すると、携帯からはしわがれた声で。
『わしだ。』
「何だじじいか。」
 大体予想していたことなので、凰繕は呆れた感じにそう言った。
『ええい!“何だじじいか”ではない!さっさと戻らぬか!』
「んなこと言われても、俺呼び出し方知らないし……。」
 凰繕は走りつつ、寺のほうに向かっていた、そうしている間にも、怨霊機は町で暴れ始めている。
「ふふふ、楽しんでる楽しんでる。」
 青い、陰陽師風の青い服を着た男、真月は、怨霊機が暴れる様を見てほくそえむ。
「今回はえらく活発だな、まぁ、ごみ焼却場をやめさせられた男を利用しただけだしな。」
「自分の存在意義というのが解せないんだろうね、だから全てを壊さないと落ち着いてられない、人間とはかくも愚かな物なのか……。」
「全くだな。」
 馬元は同意したように頷いた。
 一方、凰繕は。
「よっしゃぁ、何とか寺に到着!」
 凰繕はガッツポーズをとった。
『「人の話を聞かぬかたわけが!」』
 凰繕の目の前で、新繕が怒鳴り散らした。
「うるさいなぁ、電話代かかるから切るよ。」
 凰繕は携帯を切った。
「声を聞いたそうじゃな?」
 凰繕は少しそっぽを向きながら。
「ああ。」
「……、その時聞いたことを何一つ忘れてはならんぞ、それがお前の力となる。」
 凰繕は少し首を傾げ。
「ん〜、まあ肝に銘じといてやるよ、じゃあ行って来るぜ。」
「言って来るがいい我が孫よ。」
 凰繕は再び走る、今度は護法機の置いてあろうところへ。

 ―――護法機安置所

 目の前には、見るからに鉄でできた、スマートな仏像、見るものに圧倒的な存在感を与える物の前に凰繕はいた。
「……、頼むぜ。」
 その仏像は、目を赤く光らせ、胸のハッチを開いた。
 凰繕は、仏像を登り中に入った。
 中の様子を説明すると、所々に、文字がかかれているだけで、後は何も無く、人1人が乗るには広すぎるスペースでさえあった。
 そして、凰繕が乗ったのを確認すると、真っ暗な中は、外の様子を映し出すモニターとなった。
「行くぜ!」
 凰繕は勢いよく、ジャンプした。
 護法機は、やはり山の頂上から姿を見せ、町のほうへ向かった。

「おらぁ!覚悟しやがればけものぉ!」
 凰繕が怨霊機を指差すと、その存在に気付いたのか、怨霊機はターゲットを凰繕に変更した。
「オオオオオオオオ!!!!!!!」
 怨霊機は、右手の形を銃の形にし、そこから勢いよく火を噴いた。
「うを!あっちぃ!」
 凰繕は、ギリギリで、それをかわした。
「やりやがったな!」
 凰繕は、勢いよく怨霊機のほうへ走っていき、一発パンチを食らわせた。
 怨霊機はその反動で勢いよく後ろに倒れた。
 怨霊機は起き上がると、今度は左手を剣の形に変えた。
 護法機は、寸前でそれをかわし、もう一発パンチを入れた。
「オオオオオオオ……。」
 しかし、怨霊機はすぐに再生をする。
「ちっ!こうなりゃあれだ……え〜と……、無双法身、虚空同体。」
 護法機の体が赤く光っていく。
「不動明王!」
 そして、光がやみ、護法機の背中には炎がまとわれている。
「おお、あの妙な声なしでできた!」
 ふと、新繕の言ったことを思い出し。
「……、じじいの言うこともあながちはずれじゃねぇかも。」
 そう呟いた。
 凰繕が考えている間にも、怨霊機は、両手を一つに集め、巨大な大砲の形にした。
「む。」
 不動明王は片手を怨霊機のほうに翳した、怨霊機は、大砲から強力な青い光線を出してきた。
 ドゥン……。
しかし、不動明王が作り出した炎により、それは相殺された。
「あんたも甘いな、俺だって攻撃だけじゃねぇつもりさ。」
 すると、凰繕は、怨霊機のほうに向かっていき、再び、一発パンチを入れた。
 怨霊機は防ごうとするが、そのパンチは腕ごと怨霊機を殴り、そして、2発3発と、どんどん入っていく。
「オオオオオオ………。」
 しかし、怨霊機は身体がボロボロになってもまだ立ち上がる。
「くどい!しつこい奴は……。」
 次は、どんどん蹴りが入っていく。
 そして、不動明王の拳に炎がこもり、怨霊機に密着せんばかりに接近した。
「友達無くすっての!」
 ズゴォン!
 腹を殴る、怨霊機は身体を貫かれ、大きく後ろに跳んだ。
 怨霊機の身体は、どんどん燃え上がって行き、最後は全身に炎が行き渡り、身体が燃え尽きた。
「よっしゃぁ!被害は最小限!」
 凰繕はガッツポーズをとった。
 怨霊機が燃えた後には、符が1枚残っていた。
「いよし回収。」
 凰繕はそのまま、符を回収した。

 ―――寺。

「よぉじじい、持って帰ってきたぜ。」
 凰繕は、手に入れた札を得意げに見せる。
「おお、よく帰ったな凰繕……、その符はあとで処理しておく……、それよりお前に話がある。」
「話?」
 この寺には比較的落ち着ける場所は少ない。
 人が住むに当たって何故少ないのか?それは恐らく、この寺の住職、新繕しか知らぬことだろう。
 話を戻すと、そんなこの寺で数少ないくつろげる部屋と言うのが寝室、ここで話をすることになった。
「で?話って何だじじい?」
 凰繕はめんどくさそうな態度を見せる。
 しかし、新繕は気にした様子も無く。
「……従来のロボット物なら5話くらいまで引っ張る物だろうと考えると思うが、このままでは京都の被害が酷くなる一方だから今回話そう。」
「だからなんだよ?」
「護法機・不動明王の操者の役目、そして、護法機の使命。」
 凰繕はしんけんな顔つきになった。
「昨日今日と現れた物が何なのかは知っているよな?」
「ああ、怨霊機だろ?」
 新繕はうなずいた。
「あの怨霊機は、数えられるほどの数ではない、奴らが本気を出せば、この世界はすぐに滅んでしまうだろう。」
「な……、じゃあ、何で一体ずつしかでてきてねぇんだ?」
「恐らく、奴らの主の力がまだ不安定と言うことだ、奴が完全に覚醒すれば……。」
 新繕はそれ以上は言わなかった、言ってしまうことで、凰繕に不安を与えたくは無かったのだろう。
「だが、奴の力に対抗できるのは、不動明王を含む5大明王……、その力を結集すれば、奴らに対抗できる。」
「へぇ、で?それはどこにいるんだ?」
 新繕は下をうつむき、首を振りながら。
「分からん。」
「は?」
 凰繕はあっけをとられた。
「まあとりあえず、日本にはあると言うことは分かっておる、まあまずは、この地図にあるところに行っておけ、そこにいる人物に会い事情を説明すればいいじゃろう。」
「あのなぁ……、もし俺が行ってる間に怨霊機が表れでもしたらどうすんだよ?」
「その点は心配が無い。」
 新繕は確証のこもった声でそう言った。
「何で?」
「奴らのねらいはお前だからじゃ。」
「へぇ……。」
 少し沈黙が続き。
「はぁ?」
 凰繕は思わずそう言った。


第3章へ

小説空間に戻る
TOPに戻る

[PR]動画